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一流ダーツプロになるために必要なのは才能か努力か(後編)

deliberate practiceの真の目的

前回はいわゆる「漫然とした練習」と対比した形で、deliberate practiceとは、まず「目的ある練習だ、ということを説明しました。
一流ダーツプロになるために必要なのは才能か努力か(前編) – 家ダーツ.com
しかし、実は、deliberate practice = 「目的ある練習」かというと、ここはイコールではないのです。deliberate practiceとは、その最終目的である「心的イメージ」を身につける一連の過程を言うのであり、目的ある練習はその手段にすぎないのです。では、この「心的イメージ」とは何でしょうか。

 

deliberate practiceの目的である「心的イメージ」とは

心的イメージとは、脳が今考えているモノ、概念、一連の情報など具体的あるいは抽象的な対象に対応する心的構造のことである。

このように書かれていますがいまいちイメージが湧かないと思います。本書ではモナリザや犬、チェスの話を使って描写をしています。

たとえば将棋の盤面をぱっと見せられれば、詳しい人なら「これは先手が有利だ」と直感的にわかったりしますが、将棋に詳しくない人がそれを理解するには、「まず後手の囲いが先手のこの駒の効きにより効果がなく、ここを攻められると~」のように解説してもらわなければわからないでしょう。

サッカーで言えば、サッカーを全く知らない人が一場面を見ても、22人がそれぞれ規則性無く走り回ってるようにしか見えないですが、詳しい人が見れば、「ここがDFラインで、いまここまでゾーンを押し上げてプレスしているので~」のように、ひと目で状況がわかるでしょう。

このような例から、これは頭脳ゲームだけかと思ってしまいますが、そうではありません。本書では、プロ野球選手は140キロの球をどうやって打ち返しているか?という例を使い、物理的に体を動かすスポーツにおいてもこの「心的イメージ」が重要であることを解説します。

 

ダーツにおける心的イメージ

※ダーツについては本書ではほぼ取り扱っていないので、この部分については管理人がこれを書いた時点での考えです。

本書には色々なスポーツについての心的イメージが書かれていますが、ダーツに一番近いのはインドア・クライミングについてかなと思います。詳しくは本書を当たって欲しいですが、インドア・クライミングの熟達者は、色々な状況でのグリップを無意識のうちに使い分けることができ、逆に初心者は一つ一つ確認しなければいけない、ということです。

ダーツで言えば2つの面があるのではないかと思います。まずフォームについての心的イメージ。初心者はスタンス・グリップ・セットアップ・テイクバック・リリース・フォロースルーと、フォームを細かく分解したそれぞれについて意識して修正しなければいけません。そして上級者になるにつれ、それが意識しなくても正しくできるようになります。この理想的なフォームについての心的イメージが1つ。

もう一つは、ダーツの飛びに関する心的イメージ。いわゆるラインというものですが、初心者は自分のダーツがどういう放物線を描いて飛んで行くかをわからない人がほとんどです。上達するに連れて多くの人はこのラインを意識するようになり、目標とラインの関係性で狙いをつけるようになります。これをラインにダーツを乗せてあげるように投げるだけ、と表す人もいます。

そしてさらに上達すればそれを意識しないでも行えるようになります。たとえ上級者じゃなくても、ある程度投げていれば、2投ブルに入った時に「3投目が投げる前からブルに入るのが分かった」というゾーンに一瞬意識が入るという感覚を持つ人はいるのではないでしょうか。おそらく、上級者はその感覚をかなりの高い確率で1投目から持っているか、もしくはそれが当たり前になり、むしろ全く意識しなくなっているかもしれません(このへんは想像です)。

この、「フォーム」と「ダーツの飛び」についてのイメージを作り、それを無意識になぞれるようにすることが、ダーツにおいての「心的イメージ」なのではないかと思います。

心的イメージをどう作っていくかについても本書では掘り下げているので、ぜひ参照してください。

 

練習、練習、また練習

ダーツでよくある間違えが、「ダーツは筋力の要らないスポーツだから、コツさえつかめばすぐに上手くなる」というものです。たしかにある程度うまくなるのはシンプルなスポーツであるだけに他より早いといえますし、短期に上達する人がいるのも確かです。しかし、AA、SAというような上級者の域に達するにはとにかく練習しなければいけません。

本書では、よく言われる「10000時間の法則」を検証し(そしてそれは否定するのですが)、プロと言われる中でも標準的なプロとトッププロには練習時間に差があり、練習時間が少なく、なおかつ超一流である人間はいない、という結論を出しています。

これはフィル・テイラーの言葉だったかちょっと曖昧ですが、「ダーツにより多くの人生を捧げた人間が勝つ」という言葉があります。これはトッププロが言うからこそ価値があるのでしょう。フィル・テイラーは練習の鬼としても知られています。

 

「目的ある練習」+○○=deliberate practice

本書のまとめとしては、deliberate practiceとは、「心的イメージ」を作るための練習である。そして、そのためには「目標ある練習」に加えて、2点のことを注意しなければならない、としています。

第1に、その目標とする分野が高度に発達し、最高のプレイヤーが初心者とは明らかに異なるレベルに達しているものであること。競争のないガーデニングなどはそもそもdeliberate practiceがやりようがないということです。ダーツはこれは問題ないでしょう。

第2に、その競技を教授できるものがいて、練習法が既に確立されており、その練習法を元に育ったエキスパートが存在していること

この2点を前提に、「目標ある練習」を行うことが必要、としています。さらに具体的なdeliberate practiceとは、という部分についてはやはり本書の第4章などを確認してください。

 

最後に

ここまで長々と書きましたが、結局のところダーツの上達というのは、適切な努力を膨大に積み重ねること、という、ある意味つまらない結論になってしまったかもしれません。才能の差というのも関係なく、あなたに実は隠れた才能があり、あるコツを掴んだら一晩にしてフィル・テイラーになっていた…ということは、残念ながら絶対にないのです。

ここに書いた以外にもダーツに役に立つことが本書にはかなり多く含まれています(第6章「苦しい練習を続けるテクニック」などなど)。是非、真剣にダーツで上を目指すのであれば読んでみることをおすすめしたいと思います。

―人間が取り組む大抵のことにおいて、われわれには正しい方法で訓練さえすれば、
技能をどこまでも向上させていく素晴らしい能力があるのだ― 本書より